
防災を習慣にするには、ひとつの行動を短く試し、できなかった点を直して、もう一度確かめる方法が役立ちます。家庭なら「地震の合図で頭を守る」「ライトを点ける」「連絡先を取り出す」などから始められます。この記事では道具の購入より、使う行動の練習を中心に紹介します。
練習は、始める前の安全確認から
実施することを一緒にいる人へ伝え、明るい時間に、足元を片付けた場所で行います。突然警報音を鳴らして驚かせたり、転倒や浸水を再現したりする必要はありません。医療機器や冷暖房を止める訓練、暗闇での階段移動も避けます。体調や身体の状態に合わせて、口頭で確認するだけでもかまいません。
気象庁の訓練案内では、事前に行動を考え、訓練後にできたこと・できなかったことを確かめる方法を紹介しています。以下の時間と組み合わせは家庭で始めやすくするための例で、効果を保証する基準ではありません。
1回1テーマで始める、家庭の短い訓練
| テーマ | 試すこと | 終わった後に見る点 |
|---|---|---|
| 地震の初動 | 近くの安全な場所を確認し、合図で姿勢を低くして頭を守る | 棚やガラスが近くないか。机の下に入る動作が無理なくできるか |
| 明かり | 室内照明をつけたまま、ライトを取り出して点灯する | 置き場所が分かるか。スイッチや電池交換が扱えるか |
| 連絡 | 家族と同じ電話番号で伝言を登録・確認する方法を試す | 番号・操作・伝える内容が共有できているか |
| 食事 | 加熱不要の備蓄食品で1食を用意する | 主食だけにならないか。食べ切れるか。食器や水が足りるか |
| 避難経路 | 平穏な天候と明るい時間に、無理のない経路を確認する | 危険箇所、迂回路、災害の種類に合う避難先を説明できるか |
地震の練習は「どこで身を守るか」を決めて行う
気象庁が紹介するシェイクアウト訓練は、姿勢を低くし、頭を守り、揺れが収まるまで待つ行動を約1分行うものです。実際の強い揺れが1分で終わるという意味ではありません。家具や落下物の危険がある位置でじっとするのではなく、平時に安全な位置を見つけておくことが先です。
同じ部屋でも、食卓にいるときと床で遊ぶときでは取れる行動が違います。机に入れない人は周囲の危険を減らし、その人が取れる姿勢や支援方法を考えます。具体的な初動は地震が起きたときの場所別の行動で確認できます。
連絡の練習は、相手が確認できるところまで
災害用伝言サービスは、書き込んだだけでなく、連絡相手が同じ番号で読めるかまで試します。NTT東日本のweb171体験利用案内で利用できる日と条件を確認し、平時に家族と練習してください。実際の災害では通信状況によって利用できない場合もあります。
伝言の練習文は「訓練です。無事です。今は〇〇にいます。次は〇〇へ移動予定です」のように短くします。詳しいルールを決めるときは家族の防災会議の項目を使い、連絡が取れないときの行動も共有しましょう。
忘れたら、仕組みを小さくして再開する
「毎月最初の休日に1項目だけ」「食品を入れ替えた日に開けて食べてみる」など、実施するきっかけを決めます。忙しい月に全項目を取り戻そうとせず、次にひとつ確認する日を選びましょう。日常の補充や片付けへの組み込み方は買い物・家事と防災をつなぐ方法で紹介しています。
保田ほか(2021)の防災教育の研究は、宮城県・福島県の15小学校の5年生を対象に調査し、多くの項目で授業直後に上がった得点が1か月後に下がったことを報告しています。家庭の大人に同じ効果を実証した研究ではありませんが、一度知った内容を後日確かめる必要性を考える参考になります。
練習の成果は「速さ」より、次に直せること
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 試したこと | 寝室からライトを取り出す |
| できたこと | 場所は分かり、点灯できた |
| 困ったこと | 棚の奥で取りにくかった |
| ひとつ直すこと | 寝床から手が届き、落ちにくい場所へ移す |
| 次の確認 | 移した後、本人が取り出せるか確かめる |
子どもや家族ができなかったときは、叱る材料にせず、物の置き方や説明の分かりやすさを見直します。苦手な音や動作がある場合は本人の負担を聞き、必要な支援を相談してください。
よくある疑問
一人暮らしでも訓練できますか?
ライトの操作、備蓄の試食、安全な場所の確認はひとりでもできます。安否連絡は家族や友人と、相手が受け取れるかまで確認します。
避難の練習は実際の悪天候のときに行いますか?
いいえ。経路確認は安全な天候と時間に行います。大雨や警報時は練習ではなく、自治体の情報等に基づく安全確保を優先します。
今日やること
ライトを取り出して点け、困った点をひとつ直して戻しましょう。次に試すテーマを1つ決めて、カレンダーへ書けば、今日の練習は完了です。
参考資料
- 気象庁「緊急地震速報を活用した訓練について」
- 気象庁「緊急地震速報を見聞きしたときは」
- NTT東日本「災害用伝言板(web171)体験利用のご案内」
- 保田真理・齊藤玲・邑本俊亮(2021)「小学生を対象とする防災教育の効果の持続性と家庭への波及:沿岸部と内陸部の比較」自然災害科学40巻S08号、125–142頁
資料確認日:2026年10月20日。地域の避難先・支援条件や製品の注意事項は、自治体・メーカーの最新情報をご確認ください。











