
費用をかけずに始めるなら、寝る場所の安全、避難経路、地域の災害リスク、家族の連絡方法の4点から確認しましょう。水・食料・携帯トイレなどは、家にある数量を数え、不足分を優先して補います。無料でできる確認と、購入が必要な備えを分けると、限られた予算でも進めやすくなります。
この記事は、家庭で防災を始めたい人に向けた準備の手順です。災害が迫っているときは、用品をそろえることよりも、その場の安全確保と必要な避難を優先してください。
今日、買い物の前にできる4つの確認
1.寝る場所に家具が倒れてこないかを見る
布団やベッドに横になる位置から、たんす、本棚、テレビ、鏡、棚の上の荷物を見てください。倒れたり落ちたりしたとき、体や出入口に届く物があれば、寝る位置や収納を見直します。重い物は低い位置へ移しますが、通路に置かないようにしましょう。
配置変更は、家具固定の代わりにはなりません。固定器具は家具と壁の構造に合うものを選び、説明書に従って取り付けます。キャスターのロックだけで十分と考えず、移動・転倒を防ぐ対策も確認してください。重い家具を一人で動かすのは避け、家族や住宅管理者などへ相談しましょう。[1]消防庁の家具転倒防止資料
家具を固定できない理由には、費用だけでなく作業の難しさもあります。2022年12月に全国の20歳以上250人を対象に行われたWeb調査では、「自分または1人ではできない」という回答も報告されました。この調査は家具固定による被害軽減効果を実験したものではありません。作業が難しい場合は無理をせず、住宅管理者や専門業者に、壁に適した方法と費用を確認してください。中嶋ほか(2023)の家具所有・固定状況の調査
2.寝室から玄関までの通路を片付ける
廊下、階段、ドアの前にある箱や荷物を片付けます。持ち出し袋も、取りやすく通行を妨げない場所に置きましょう。枕元にはライトと、足を覆える底の厚い履き物を用意します。薄いスリッパだけで、ガラス片から足を十分に守れるとは限りません。
3.ハザードマップで災害ごとの避難先を調べる
自治体のハザードマップや[2]ハザードマップポータルサイトで、自宅周辺の洪水・土砂災害・津波などのリスクを確認します。地域によって公開されている情報や想定条件は異なるため、自治体の説明も読んでください。
「指定緊急避難場所」と「指定避難所」は役割が違います。前者は災害の危険から緊急的に逃れる場所で、災害の種類ごとに指定されます。後者は避難した人が一定期間滞在する施設です。近い学校や公園でも、洪水や津波の避難先に適しているとは限りません。[3]内閣府の避難場所の説明
- 自宅で想定される災害を一つ確認する。
- その災害に対応した避難先と、別の候補を調べる。
- 川、崖、低い道路などを避けられる経路を考える。
- 家族が確認できるよう、避難先と連絡先を紙にも控える。
経路を歩いて確認するのは、天候が穏やかな平常時に行います。危険を確かめるために、大雨の中で川や崖へ近づいてはいけません。
4.連絡が取れないときの行動を決める
「連絡がつかなければ家に戻る」と一律に決めず、まず各自がいる場所で安全を確保することを共有します。学校・勤務先の対応方針、離れている家族への連絡手段、安全な場合の合流先を確認してください。災害用伝言サービスは、通信事業者の公式案内を見て、体験利用ができる日に練習しておくと操作を確認できます。
水・食料・トイレは「人数×日数」で不足を見つける
用品を買う前に、家にある水、食品、携帯トイレの数量を書き出します。在宅用の備蓄をすべて持ち出す必要はありません。持ち出し用品は、自分が安全に運べる量に分けてください。
| 備える物 | 1人の目安 | 4人で3日分 |
|---|---|---|
| 水(飲用・調理用) | 1日約3L | 約36L |
| 食料 | 最低3日分、可能なら1週間分 | 3食で計算すると36食分 |
| 携帯トイレ | 1日5回で計算 | 60回分 |
水と食品の目安は[4]農林水産省の食品ストックガイド、トイレの計算は[5]内閣府掲載の備蓄啓発情報を参考にしています。トイレは1人1週間で35回分が目安です。実際には年齢、体調、食事内容、使用回数に合わせて調整してください。
1人1日約3Lの水は、飲用と調理用の目安です。手洗い、清掃、トイレなどの生活用水まで含めて足りる量ではありません。水洗トイレは、断水だけでなく排水設備の損傷でも使えなくなるため、使用可否が確認できるまでは無理に流さず、携帯トイレなどを利用します。
食品は「加熱せずに食べられる物」も組み合わせる
いつも食べる保存性のある食品を少し多めに持ち、期限が近い物から食べ、使った分を補う方法がローリングストックです。缶詰、クラッカー、常温保存できる食品などから、家族が食べられる物を選びます。レトルト食品やパックご飯は、加熱の要否を商品表示で確認してください。米や乾麺だけでは、水と熱源が使えないと調理に困ります。
乳幼児の食品、食物アレルギーや食事制限に対応した食品、介護用品、薬は家庭ごとに必要な物が違います。薬の予備や保管方法は、医師・薬剤師へ相談しましょう。
予算が限られるとき、何を先に買う?
全家庭に共通する購入金額や順番はありません。次の質問で、自宅の不足を一つ選ぶ方法がおすすめです。
- 今夜停電したら?使えるライトと電池があるか、実際に点灯して確認する。
- 断水してトイレを流せなかったら?携帯トイレを何回使えるか数え、足りない分を補う。
- 買い物に行けなかったら?水と、加熱せずに食べられる食品が何日分あるか確認する。
- 家族に欠かせない物は?薬、乳児用品、補聴器の電池など、代用しにくい物を確認する。
一度に必要量を用意するのが難しい場合も、まず現在の不足量を把握しましょう。買い足しの計画を立てるときも、使用できる備蓄が何日分あるかを確認してください。必要性の高い不足品から、可能な範囲で早めに補います。
ライトやポリ袋などは手持ちの日用品も使えます。ただし、普通のポリ袋や新聞紙だけで、災害用トイレの衛生・防臭対策がすべて代用できるとは考えないでください。カセットコンロなど火を使う器具は、対応ボンベ、使用場所、換気、保管方法を製品の説明書で確認します。
今日の行動を一つ選ぶチェックリスト
- 寝る位置から、倒れてくる家具がないか確認する。
- 寝室から玄関までの通路を片付ける。
- 自宅で想定される災害と、対応した避難先を調べる。
- ライトを点灯し、水・食品・携帯トイレの数量を数える。
- 不足品を一つメモし、次の購入時に補う。
確認した内容は家族と共有し、転居、家族構成の変化、薬の変更、季節の変わり目に見直します。できている対策と不足している対策を分けると、次に行うことが具体的になります。
備蓄を詳しく確認する場合は、家庭用備蓄の基本も参考にしてください。記事内の数値は、各家庭の事情と自治体の案内に合わせて確認しましょう。
よくある疑問
防災セットを買わないと準備できませんか?
手持ちのライト、食品、日用品から始められます。セット商品を購入する場合も、家族に必要な数量と、実際に使える物かどうかを確認してください。
備蓄があれば、自宅で過ごしてよいですか?
備蓄の有無だけでは判断できません。建物の損傷、火災、津波、洪水、土砂災害などの危険と自治体の情報を確認し、安全を確保できない場合は必要な避難を優先します。
賃貸で壁に穴を開けられない場合は?
契約と壁の構造を確認し、管理会社や大家へ相談します。穴を開けない器具もありますが、家具・天井・設置面との適合確認が必要です。まず出入口や寝る場所に倒れてくる物を減らし、固定方法の相談と併せて進めましょう。
まとめ:無料の確認で不足を見つける
最初は寝室と通路の安全、災害ごとの避難先、家族の連絡方法を確認します。次に水・食品・トイレの数量を数え、家族に欠かせない物の不足から補いましょう。購入額ではなく、使える備えと残る課題が分かることが次の行動につながります。
参考にした一次情報・研究資料
情報確認日:2026年10月16日。備蓄の目安は全国共通の参考情報として紹介しています。避難先の開設・受け入れ条件、地域の災害リスクは、お住まいの市区町村の最新情報を確認してください。
- 総務省消防庁:地震による家具の転倒を防ぐには
- 国土地理院:ハザードマップポータルサイト
- 内閣府:避難場所に関すること
- 農林水産省:災害時に備えた食品ストックガイド
- 内閣府:災害用トイレの備蓄に関する啓発情報
- 中嶋観司・阿部眞理・白石照美(2023)「家庭内における収納家具の所有および固定状況に対する調査」日本デザイン学会第70回研究発表大会概要集。DOI: 10.11247/jssd.70.0_168(学会発表概要)。












