
一人暮らしの高齢者の防災では、「いつ・どこへ避難するか」「誰と連絡を取るか」「薬や生活用品をどう確保するか」を、本人と周囲の人で具体的に決めておくことが大切です。
年齢だけで必要な支援は決まりません。歩ける距離、見え方・聞こえ方、持病、住まいの状況に合わせて準備しましょう。この記事では、本人・家族・支援者が一緒に確認できる手順をまとめます。
最初に、本人と確認する3つのこと
- 自宅にどの災害の危険があり、どこへ移動するか。
- 一人でできることと、避難や生活で手助けが必要なこと。
- 連絡する相手と、その人につながらない場合の方法。
家族だけで決めず、本人の希望と普段の暮らし方を聞きます。遠方の家族がすぐ来られるとは限らないため、地域の相談先も確認しておきましょう。
大雨・台風は「警戒レベル3」を避難の目安にする
大雨や台風などで、市区町村が警戒レベル3「高齢者等避難」を発令したら、危険な場所にいる、避難に時間のかかる人とその支援者は避難する段階です。情報が出てから準備を始めるのではなく、その前に持ち物や移動手段を確認します。状況によっては、さらに早い避難が必要です。
安全な場所にいる人まで、全員が避難所へ行くという意味ではありません。平常時に自治体のハザードマップで自宅の危険と、建物内にとどまれる条件を確認します。避難先は、その災害に対応した指定緊急避難場所や、安全な親族・知人宅などから選び、受け入れ可能かも相談してください。
出典:内閣府「避難情報のポイント」(PDF)。警戒レベル5の発令を待たず、危険が増す前の行動を考えましょう。
この警戒レベルの目安を、地震・津波の避難待ちに使ってはいけません。海辺で強い揺れや長くゆっくりした揺れを感じた場合などは、より高い安全な場所へ避難します。津波警報等が解除されるまでは戻らないことも共有してください。参考:気象庁「津波から身を守るために」
移動に不安があるときは、個別避難計画を相談する
個別避難計画は、自力で避難することが難しい人について、支援する人、避難先、移動方法などを整理する計画です。自治体の防災・福祉窓口に相談し、必要に応じてケアマネジャーや地域包括支援センターなど、普段の支援者にも話しておきます。
対象や手続きは自治体で確認してください。本人の同意や、情報を共有する相手・範囲も相談します。参考:内閣府「避難行動要支援者の避難行動支援」
| 決めておくこと | 確認する内容 |
|---|---|
| 避難先 | 災害の種類への適合、段差、トイレ、必要な介助、受け入れ方法。 |
| 移動方法 | 歩行や車いす等での所要時間、手助けする人、通れない場合の経路。 |
| 連絡 | 主な連絡相手、つながらない場合の相手・方法。 |
| 支援者が来られない場合 | 別の支援者、早めに移動する方法、自治体へ相談する手順。 |
大網白里市の案内でも、遠方の家族は時間的余裕がない場合に支援に来られず、計画の作成が災害時の支援を保証するわけではないと説明しています。本人と支援者の安全を前提に、迎えを待ち続けなくて済む方法を考えましょう。参考:個別避難計画の作成について
持ち出す物は、本人が使えるか試して選ぶ
自宅で使う備蓄と、避難時に持つ物を分けます。持ち出し袋の重さに一律の正解はありません。普段使う杖などと一緒に持って歩けるか、支援者と安全な場所で試し、移動の妨げになる量を詰め込まないでください。
| 優先して確認する物 | 本人に合わせる点 |
|---|---|
| 薬・お薬手帳 | 必要な量と保管方法は医師・薬剤師へ相談。薬名、用法、持病、アレルギー、受診先も控える。 |
| 眼鏡・補聴器・入れ歯など | 普段使う物と、電池・充電器・手入れ用品を確認。 |
| 照明・電話・連絡先 | スイッチが操作でき、表示が読めるか試す。連絡先は紙にも残す。 |
| 水・食品 | 開封しやすさ、食べやすさ、食物アレルギーや治療上の制限を確認。 |
| トイレ・衛生用品 | 携帯トイレの使い方、普段必要な介護用品、着替えを確認。 |
食品は普段から食べて補充し、食べ方に合う物を選びます。かむ・飲み込むことに不安がある場合は、普段の食事形態やとろみ等の指示に合わせ、専門職へ相談してください。参考:農林水産省「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」
自宅に置く水・食料の目安は「備蓄の必要数と優先順位」も確認してください。
薬・受診情報は、停電しても伝えられるようにする
薬の予備を確保するために、自己判断で服用量を減らしたり、中止したりしないでください。処方日数、保管温度、受診できない場合の相談先を、平常時に医師・薬剤師と確認します。お薬手帳がアプリの場合も、必要な情報を紙で確認できるようにしておくと、電池切れに備えられます。
神奈川県は、薬やかかりつけの医院・薬局・親しい人の連絡先などをまとめて備えるよう案内しています。参考:災害等緊急時には
受診に使う物は、現在利用しているマイナ保険証または資格確認書を確認します。従来の健康保険証は有効期限が終了しています。また、「資格情報のお知らせ」と「資格確認書」は別の書類です。現在有効な物を、普段使うバッグなど持ち出しやすい場所で管理しましょう。持ち出せなかった場合も、受診を諦めず医療機関へ相談してください。参考:厚生労働省の受診方法の案内
医療情報や家族の連絡先は、外から誰でも見える場所へ掲示せず、本人と相談して保管場所を決めます。必要な支援者には、保管場所と確認方法を共有しましょう。
停電に備え、寝室・室温・医療機器を確認する
寝床から出口までの通路を空け、倒れる家具や落下物が寝る場所を直撃しないか確認します。固定器具は取り付け先の強度や製品の説明に従い、無理な作業は家族や専門事業者へ相談してください。
枕元には、取りやすい位置にライト、眼鏡、電話、足を保護できる履物を置きます。実際に取り出せるか、転倒しない条件で試しましょう。
冷暖房が使えないときの移動先も相談します。人工呼吸器など電源が必要な医療機器を使っている場合は、主治医・機器事業者と、対応する予備電源、使用できる時間、連絡先、受入先を具体的に確認してください。一般向けの電源を自己判断で代用しないことが大切です。参考:福岡県の停電への備え
詳しい点検は「寝室・家具固定の地震対策」「夏の停電対策」「冬の停電対策」で確認できます。
計画した経路と道具を、支援者と一度試す
上岡裕美子ほか(2014)は、移動に障害のある要援護者5人と支援者4人を対象にした避難訓練を評価し、実施によって各事例の具体的な問題点が見つかったと報告しています。少数の事例の研究で、全員が同じ方法で避難できることを示したものではありません。
本記事ではこの知見を参考に、天候と体調のよい日に、必要な専門職・支援者と、経路の段差や所要時間、道具の操作を確認することを提案します。一人で危険な移動や介助を試す必要はありません。
出典:「災害時要援護者に対する地震を想定した避難訓練の評価:移動に障害のある人を対象として」リハビリテーション連携科学15巻2号、114–125頁(2014)。
一人暮らし高齢者の防災でよくある質問
高齢者は全員、避難所へ行きますか?
自宅の危険、建物の状態、体調、必要な支援で判断します。安全な親族宅なども含めて平常時に相談し、危険な場所にいる場合は早めの避難を考えます。
家族が迎えに来るまで待ってもよいですか?
遠方の家族は道路状況などで来られないことがあります。危険が迫る中で迎えを待つ計画にせず、地域の支援や別の移動方法を事前に相談してください。
一人で準備するのが難しい場合は?
まず家族や普段の支援者、地域包括支援センター、自治体の防災・福祉窓口へ相談します。「重い水を運べない」「階段を下りにくい」など、困る場面を具体的に伝えると話し合いやすくなります。
情報確認日:2026年10月16日。自治体の避難情報・支援制度と、本人の体調・治療内容に合わせて見直してください。











